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(株)ローズ・オブ・ローゼズ代表
大野裕明氏にお話を伺いました。
日本へ渡った究極のバラ
もうひとつの、イングリッシュローズ物語
オールドローズのクラシカルな花形と香り、モダンローズの育てやすさを併せ持つイングリッシュローズ。イギリスの育種家デビット・オースチンが50年もの歳月をかけて作り出した究極のバラです。今ではバラ好きの間ではすっかり知られる存在ですが、日本で普及するには、ある一人の栽培家の夢実現への努力があったからなのです。それが(株)ローズ・オブ・ローゼズ代表の大野裕朗さん。今回は大野さんを訪ね、イングリッシュローズが日本でブレイクするまでのエピソードをお話しいただきました。
イングリッシュローズとの出会い
私はイングリッシュローズと出会う前の約20年間は、切り花用のバラ苗を主体に扱っていたんです。というのも、当時日本のガーデナーの間では、「バラ作りは難しい」という理由からガーデン用のバラは人気がなかったんですね。やがて私は、1989年から英国のチェルシー・フラワーショー(※1)へ出かけるようになり、日本では見たことのない「変わったバラ」に出会いました。それが「イングリッシュローズ」と呼ばれるガーデン用のバラたちでした。特に印象深かったのは、シャクヤクのような花弁がびっしりとついたカップ咲きやロゼット咲きと呼ばれるクラシカルな花形。何しろ当時日本では、高芯剣弁(※2)の花形が人気で「高芯剣弁でなければバラではない」ぐらいのイメージができあがっていましたから、ちょっとした衝撃でしたよ。
※1)毎年5月にロンドンで開催される、世界最大のガーデン&フラワーショー。
※2)ハイブリッドティーなどに代表される、剣のように尖った花弁を外側にそり返らせた花形。
デビッド・オースチンとの出会い
93年のことです。岐阜県可児市で「花フェスタ」が95年に開催されることになって、私がその記念公園の植栽を担当することになったんです。その時、私は絶対にイングリッシュローズを入れたい!と思い、オースチン氏に何度もアポイントを取ろうとしたんです。でも、なぜか「会わない」の一点張り。後でわかったんですが、オースチン氏が頑固なまでに拒絶したのは、以前、日本のある会社に極めて不誠実な対応を取られ、日本に対して不信感を募らせていたからだったんです。それでも、私は引き下がれません。何しろ記念公園の植栽計画では、イングリッシュローズを植える予定で、一番メインのスペースがスッポリ空いていたんですから…。土壇場で窮地に追い込まれた私は、あの手この手を使ってようやく1時間だけ会う約束を取り付けました。そして、早速オースチン氏に会いに行き、バラづくりの経験や苦労話などを話していくうちにすっかり意気投合!苗を送ってもらう約束を取り付けたんです。ところが横で話を聞いていた息子、営業担当であるオースチンJr.は断固として「ノー!!」。その場で親子喧曄まで始めてしまう始末。それでも親の権限でしょうか?オースチン氏は息子を説き伏せてくれましたよ。でも、それからが大変!私はオースチン親子の気が変わらないうちにと、さっさと帰国して即行で発注書を送ったんですよ。
花フェスタ記念公園オープン、そして総代理店へ
それから、オースチン氏からバラ苗が届いたのはちょうど93年のクリスマス。私にとっては最高のクリスマスプレゼントでしたよ。早速年内にすべての苗を植栽し、日本の気候に馴らすために1年間養生させました。遂に95年の春、無事に花フェスタがオープンし、5月にはオースチンJr.がわざわざ家族連れで来て、大変褒めてくれましてね。それで、私がイングリッシュローズの総代理店をやる話は、この時に突然持ち上がったんです。つまり、オースチンJr.は「ここまで日本中に広めたのだから、責任をとって総代理店をやれ」って言うんです。私はビジネスにする気は全くなかったんですが、結局引き受けることになってしまったんです。それにしても驚いたのは、しばらく経ってある雑誌でイングリッシュローズの総代理店として「ローズ・オブ・ローゼズ」が紹介されるやいなや、問い合わせの電話が殺到したこと。ほんの5年前には、高芯剣弁のバラが人気で、イングリッシュローズはウケないだろうと思っていたのに、実際はそうではなかったんですね。バラ好きの間ではイングリッシュローズは待ち望まれていたってことです。まさに予想外!嬉しいハプニングでしたよ。熱狂的なバラ好きでもある私は、随分昔から世界各国のバラ公園を訪ね歩いていました。私の夢は、”世界一のバラ公園”を作ることだったんです。現在、花フェスタ記念公園では、177種類のイングリッシュローズを含め、7100種類もの世界中のバラが植えられ、名実ともに”世界一のバラ園”になりました。イングリッシュローズとの出会いから十数年、夢が遂に叶ったんです。
大野耕生さんが語る
〜イングリッシュローズの魅力〜
長いパラの歴史にまったく新しい風を送り込んだイングリッシュローズは、眺めるだけでなく、私たちに育てる楽しみをも存分に与えてくれます。ここでは、テレビや雑誌でもご活躍中の栽培家、(株)ローズ・オブ・ローゼズ取締役専務の大野耕生(おおの・こうしょう)さんに、イングリッシュローズの魅力の数々を教えていただきました。すべての品種を熟知していらっしゃる大野さんならではのお話がたっぷり!
花の美しさについて
「オールドローズのクラシカルな花形を持ちながら、モダンローズの豊富な花色を受け継いでいるのがイングリッシュローズ。でも、モダンローズにありがちな派手な色彩ではなく、主張し過ぎない優しい色彩が多いですね。ガーデンの流れの中に自然に溶け込むような色だから、他の草花とも調和しやすく、品種の違うイングリッシュローズを配置してもケンカしないんです。また、イングリッシュローズならではの魅力に、花色の変化があります。例えば『チャールズ・ダーウィン』は、蕾の頃はオレンジ、咲き始めると黄色が強くなり、最後はマットな色に変化します。ひと株でも花色のグラデーションが楽しめるというわけです。また、花形に関しても、カップ咲きから徐々にロゼット咲きへと変化が楽しめます。こうした変化は、育てている人だけが楽しめる特権。何しろ、毎日眺めていないとわかりませんからね」
香りと花弁の微妙な関係
「バラはもともと香りのある花、と思っている方って多いですよね。でも実際は、切り花のバラの花束ってあまり香りがないと思いませんか?というのは、香りの良さと花弁の薄さは密接な関係があって、香りが良いものほど花弁が薄くてデリケート。傷みやすいので、切り花には向かないんです。イングリッシュローズは香りの良さも有名で、フルーツ香、ミルラ香、ティ香など様々な香りがあります。香りが良いということは、花弁はデリケートということ。でも、D.オースチン氏はその辺もしっかりと計算していて、デリケートな花弁は、花を最終段階までキレイに見てもらうためにはメリットだと考えています。つまり、花が汚くなってからも、いつまでも枝に残るのではなく、まだ美しい時にハラハラと散っていくはかなさ=薄い花弁ならでは”散りぎわの美しさ”を観賞してもらいたいと考えているんですね。イングリッシュローズは花持ちが悪いと言う方もいらっしゃいますが、それは違って、散りぎわの美しいものをわざと選んでいるからなんですよ。こういう感性って、日本人の美学にも通じると思いませんか?」
耐病性について
「病気に強いというのは、ガーデン用のバラではとても重要なポイントです。特にD.オースチン氏は耐病性にも重点を置いていて、新品種を作り出すと、最後の1年は無農薬で育ててみてテストします。そして、無農薬という苛酷な条件の中でも育つ品種だけを抜粋して世に送り出しているんです。だから、農薬の量も普通のバラが10なら、イングリッシュローズは5で済みます。もちろん高温多湿な日本では、英国よりも病気が出やすいのも事実ですが、それでも他のバラに比べれば「病気が少なくて強い」という感想を持たれる方が多いですね。また、例え病気にかかってもなかなか葉を落とさないという性質があります。他のバラだと病気になると葉が黄色くなってパラパラと落ちてしまうんですが、イングリッシュローズは病気で斑ができても、葉は緑色をしていて、新芽が出るまでがんばって留まっている品種が多いんです。葉は光合成をして栄養を作り出す大切な工場なので、葉が落ちなければ株全体が病死することはあまりありません。その点も”イングリッシュローズは強い”と言われる由縁でしょうね」
四季咲き性について
「イングリッシュローズの9割近くが四季咲き性を備えています。オールドローズの”顔”をしながら、モダンローズのように何度も返り咲いてくれるのも大きな特徴です。例えば、『スノー・グース』などは、四季咲き性がズバ抜けていて、つるバラですがばっさり切ってコンパクトに仕立てて鉢植えにもできます。フェンスやアーチに這わせても、鉢植えでも繰り返したくさん花を付けるので、オススメの品種です。もちろん、一季咲きには一季咲きの良さもあります。春に咲く花のポリュームは四季咲きのものよりも上のものが多いんです。私としては、最初の1本は四季咲きのものを育てて、そして徐々に本数を増やして行く中で、一季咲きを加えていくとイイと思います。四季咲きと一季咲きを組み合せておけば、春はとても豪華ですし、他の季節も寂しくなりませんからね」
仕立て方について
「イングリッシュローズのカ夕ログには、おおよその樹高や樹形が記載されていますが、それにこだわらず様々なアレンジができるのも魅力なんです。例えば、3mのアーチに這わせて楽しみたい場合、一般的なつるパラを這わせようとすると、2〜3年でつるが登ってしまい、その先どうしたらいいか悩む方が多いんです。一般的なつるバラは、4〜5mまで伸ぴる品種が多いですからね。でも、『グラハム・トーマス』などは、毎年きちんと剪定すれば150cmぐらいで収まりますが、あえて剪定を控えれば3mぐらいまで伸ぱしてつるバラに仕立てることもできます。逆にその方が、3〜4年目から見応えのある樹形になってきます。毎年たくさん伸ぴ過ぎないので、手入れもしやすいんです。他に、一枝に数輪の花が付く『アンヌ・ボレイン』は、横に張る性質なので鉢植えにすると溢れんばかりの花が咲きます。それに、斜面を利用して地植えにすれば、まるでグランドカバーのように演出できます。百人いれば百通りのお庭があるように、イングリッシュローズにも決まった楽しみ方はないんです。育てる人の好みに合わせてくれる、そんな懐の深さがあるバラだと思います」
初めての品種選びについて
「初めてバラを育てる人には、コンテナ向きの品種がオススメです。例えば『スキャボロ・フェアー』などは、コンパクトでとても花付きが良い品種。花も可憐で日本人好みの品種の一つだと思います。パラって最初の1本がとても大切なんです。最初に育てたバラで失敗すると、ずっと悪い印象が残ってしまうでしょ?そういう意味で、病気に強くて育てやすいイングリッシュローズは、最初の1本としてはもちろん、失敗した経験を持つ人が再チャレンジするにもぴったりだと思いますよ」
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